映画『健康ちえのわトランポリン教室』岡凛インタビュー|この教室は、それぞれの人生にとってのひとつの「通過点」だと思います。

俳優 岡 凛 Interview

岡 凛(おか りん)

俳優。主な出演作に、東かほり監督『暮らしの残像』(2022年)、『セタガヤゲーム』など。『暮らしの残像』は第17回大阪アジアン映画祭などで上映された。石川皓一監督『健康ちえのわトランポリン教室』では、教室に通う生徒・綾香役を演じる。

俳優活動のほか、YouTube番組『岡 凛プロデュース』を企画・発信するなど、自身でも映像表現の場を広げている。

( Chapter 01 )

家族も、学校も、会社も、この教室と同じかもしれない。

── 最初に脚本を読んだとき、「健康ちえのわトランポリン教室」をどんな場所だと思いましたか。「変な教室だ」と感じたのか、それとも「こういう場所があってもおかしくない」と感じたのか。岡さんの第一印象を聞かせてください。

岡凛(以下、岡):教室の名前は怪しさ満載だなと思いました。

ですが、教室の中でやっていることは、どこにでも存在していて、私たちのすぐ近くにあり、このような場所にすでに属している人の方が多いのではないかと感じました。

家族という形の場所も、学校や会社も、この教室と同じではないかと思いました。

── 教室の生徒を演じるうえで、その人物がなぜここへ通っているのか考えましたか。映画の中では、すべての生徒の過去が詳しく説明されるわけではありません。岡さん自身で、その人物の生活や教室へ来た理由を想像した部分があれば聞かせてください。

岡:教室メンバーは、精神的に「一人」であるということが全員に共通していると思いました。

ハカセは、周りの人から自分を受け入れてもらえない苦しみを抱えている。じいじは、長年連れ添った奥さんが亡くなり、それと同時に笑顔を一瞬失った過去がある人だなと考えました。

みっちゃんは、今までの生活に不自由はなかったけど、一番理解してほしい家族に自分の存在を認めてもらえなかった人かなと考えました。

そして綾香は、この教室に出会ったときは人生のどん底にいて、どうでもよくなって、たまたま見つけた教室へ何も考えずに入っていったのがきっかけだと考えました。

否定されない喜びや、初めて味わう感情がその教室にはあって、綾香の理想が広がっていたので、通い続けたのだと思います。

( Chapter 02 )

あの教室で、一生懸命に生きていこうと思っていた。

── 結依がやって来る以前から、この教室にはすでに独特の空気があります。「以前からここに通っている人」に見えるために、先生やほかの生徒との距離感について意識したことはありましたか。

岡:それはたぶん、撮影の技術や演出の凄さだと思います。

あえて嫌な空気や独特の空気を出して演じようとは思わなかったので、スタッフさんたちの技術が生み出したものだと思います。

── 知恵の輪やトランポリン、掛け声など、集団で同じことをする芝居はどう作っていきましたか。集団の中で自分の人物を残すために考えたことはありましたか。

意識したこととしては、あの教室で一生懸命に生きていこうと思っていたことですかね。その一生懸命さが、あの場所で異様さを漂わせたのかもしれません。

岡:綾香は、知恵の輪もしないし、トランポリンもとばないし、掛け声もかけないのですが(笑)。

尊敬している先生のことを素直に聞き入れるということをしていたので、輪を乱すわけでもなく、集団から離れるわけでもなく、そこに居られたのかなと思います。

── 岡さんが演じた綾香は、先生をどのくらい信じていると思いますか。尊敬しているのか、依存しているのか、居心地がいいからいるのか。それとも本人には、その違いすらないのでしょうか。

岡:先生と最初に出会ったときは、人生で初めて信頼できる人に出会って、喜びや安心感を得たと考えました。

自分にはないものを持っていて尊敬もしているし、もちろん居心地も良かったと思います。

ただ、100%信じているかというとそうではなく、人を信じることをしないというか、できないと考えました。

信じた先に、大事な何かが壊れてしまうのを恐れて、決して誰にも入れさせない隙間をつくっている人だと思いました。

( Chapter 03 )

きっと二人とも、根本的に抱えるものは同じ。

── 新しく教室へやって来た結依を、生徒側からはどう見ていたのでしょうか。最初と後半で、結依への見方は変わったと思いますか。

岡:たぶんこれは完全に私の解釈かもしれませんが、綾香は結依が見学に来るのを知っていました。

先生のことをよく見ていて、一番そばにいるので、先生が話さずとも気づいていて、どんな人が来るのかを自分で調べていたと思っていました。

きっと二人とも根本的に抱えるものは同じなのに、結依の上辺だけを見たら、綾香にとってはいい気分ではないと思っていました。

── 実際の撮影現場で、教室の生徒役の皆さんにはどんな空気がありましたか。作品の中では少し不穏な集団ですが、撮影の合間やリハーサルではどんな関係だったのでしょう。

岡:本当に皆さん優しくて、素敵な俳優さんたちです。

それぞれが集中しているときもあれば、皆んなで知恵の輪をいじって全部外そうと楽しんだり、とても和やかな雰囲気でした。

俳優だけでなく、「ちえトラ」チーム全体で、それぞれにリスペクトを持っていた空気を感じました。

私が一番よそよそしかったかもしれません。すみません(笑)。

── 完成した映画を観たとき、自分が演じていた教室と、観客として見る教室に違いはありましたか。

岡:撮影期間は楽しく、わいわいカチャカチャしていましたが、観客として観た教室のシーンは恐ろしさが増していて驚きました。

教室内はシンプルなつくりだったのに、あの空間があんなに奇妙に映っていたのは、音や画の凄さだと思います。

「ちえトラ」チームはやっぱりスゴイなあと!

( Chapter 04 )

この教室は、それぞれの人生にとってのひとつの「通過点」。

── この教室は「居場所」だと思いますか。それとも「逃げ場所」だと思いますか。誰かと一緒にいることで救われることと、その場所から離れられなくなること。その境目について、岡さんはこの映画を通してどう感じましたか。

岡:決して「逃げ」ではないと思っています。

逃げてきた場所だとしても、この教室の中では皆それぞれ、自分と向き合っています。自分と向き合うということは、なかなか苦しいことだと思うからです。

ただ、「居場所」かと言われると、これもまた難しいですね(笑)。

同じ空間にいることで感じる人と人の温もりは、とても大切だと思います。でも、そこに安心し過ぎてしまって、とどまると離れられなくなってしまうのかなと。

なのでこの教室は、それぞれの人生にとってのひとつの「通過点」だと思います。

── 最後に、岡さん自身にとって「自分の居場所」とはどんな場所ですか。映画の教室から少し離れて、一人の人間として、安心して「自分でいられる場所」について聞かせてください。

岡:心から「笑える」場所。ですかね♪