映画『皆殺しに手を貸せ』オースティン・スネル監督インタビュー|古き映画ジャンルを、いまの時代に生き直す。

オースティン・スネル監督 Interview

オースティン・スネル(Austin Snell)

米カンザス州ローレンスを拠点に活動する映画監督・脚本家・プロデューサー。

ミュージックビデオをはじめとする短編映像作品を手がけたのち、2018年5月に長編映画デビュー作『暴露』を完成させる。16mmフィルムのコレクターとしても知られ、自身の制作スタジオ「サンランナー・フィルムズ」を運営。長編第2作となる『皆殺しに手を貸せ』を2024年に完成させた。

( Chapter 01 )

マカロニとジャッロ、その極端さに惹かれて。

──オースティン監督が強く惹かれている映画ジャンルについて教えてください。

オースティン・スネル監督(以下、オースティン監督):
私は、マカロニ・ウエスタンとジャッロ映画に心から惹かれています。高校時代の後半にイタリア映画へ夢中になり、その極端さや、純粋な楽しさに魅了されました。

特にマカロニ・ウエスタンには、観客の感情や欲望をとても巧みに誘導するところがあります。

あるキャラクターへの憎しみを少しずつ積み重ねていき、最後にその人物が報いを受ける。とても直接的で、ある意味では手軽な快楽なのかもしれません。でも、そこが楽しいんですよね。

( Chapter 02 )

復讐劇を、いまの時代に置き直す。

──マカロニ・ウエスタンやジャッロは、グラインドハウスやエクスプロイテーション映画の文脈とも深く結びついています。その中には、女性を主人公にした復讐劇も数多くありました。本作にも、そうした作品からの影響はあるのでしょうか。

オースティン監督:私たちが特にオマージュを捧げた作品のひとつが、『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ 〜血まみれの天使〜』(1973年)です。

女性を中心に据えたアクション映画の構造が、今回の作品にはとても自然にフィットしました。

さらに、中心人物として女性とアフリカ系アメリカ人を描くことで、いまの時代だからこそ向き合えるテーマもあると感じました。

伝統的な西部劇も、過去の時代を舞台にした映画ではありますが、実際には、それぞれの作品が作られた時代の社会や価値観を反映しています。

だから私たちも、昔のジャンル映画をそのまま再現するのではなく、いま、この映画を作る意味を意識する必要があると考えました。

( Chapter 03 )

受け継ぐものと、避けるもの。

──女性を主人公にした復讐映画には、性的暴力を物語の起点とする、いわゆる「レイプ・リベンジ」の作品も少なくありません。その点については、どのように考えましたか。

オースティン監督:確かに、その要素を含む作品は数多くあります。ただ、私は今回はそれを避けたいと思っていました。場面として似た印象を持つ部分はあるかもしれませんが、そこから外れた、新しい方向へ進みたかったんです。

復讐映画というジャンルそのものには強く惹かれています。でも、「女性の復讐劇だから、まず性的暴力が必要だ」という既存の型にはしたくなかった。

ジャンルの面白さは受け継ぎながら、その中で何を残し、何を変えるのか。そこは強く意識していました。

( Chapter 04 )

16mmで、“本物の傷”を刻む。

──過去のジャンル映画の雰囲気だけを模倣するのではなく、その精神を受け継ぎながら、現在の価値観で新しい映画として作り直したかったということですね。

オースティン監督:そうです。私が目指していたのは、古き良き映画ジャンルを再現しながらも、単なるパロディやジョークとして受け取られない作品です。その点で、16mmフィルムには大きな力があると思っています。

私たちの映画にはグラインドハウス的な雰囲気がありますが、過去の偉大な作品と同じように、そこには真剣な思いがあります。

ある意味では、クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲス以降に生まれた、いわゆる「フェイク・グラインドハウス」的な作品に対するアンチテーゼとも言えるかもしれません。

デジタル加工で映像に「傷」や「汚れ」を加えれば、昔の映画らしく見せることはできます。でも私は、それだけでは当時の作品が持っていた本質には届かないと思っています。

だからこそ、実際に16mmフィルムを使い、その素材そのものが持つ質感や偶然性、そして時間によって生まれる味わいを大切にしました。古い映画の見た目を真似るのではなく、古い映画が持っていたものを、自分たちなりの方法でもう一度作りたかったんです。