人には、
不思議と師弟の季節がある。
教える者がいて、
教わる者がいる。
だが、その物語は、
いつも円満に幕を閉じるとは限らない。
ボクも、
何人かの弟子と歩いてきた。
また、
恩師との別れを思えば、
すれ違いも、
誤解も、
怒りさえも、
師弟という関係には、
避けられないものなのだろう。
それでも時が経てば、
怒りより先に、
「元気でやっているだろうか。」
そんな親のような気持ちだけが、
残ることがある。
今回は、
どうだろう。
ある人は、
彼をヒールレスラーのようだと言った。
ボクは、
その言葉を否定できないまま、
心の底にしまった。
リングの上だけではない。
人は、
生き方そのものが
ヒールになることもある。
だからといって、
責めようとは思わない。
それもまた、
ひとつの生き様なのだろう。
今、
ボクの隣には、
兄弟子である
怪人ノビーがいる。
どんな無茶を頼んでも、
「わかりました。」
その一言だけで、
黙ってロープをまたぐ。
こんなタッグパートナーは、
高倉健と池部良が肩を並べた、
『昭和残侠伝』の中でしか
見たことがない。
だから、
ボクは決めた。
去った者を追うより、
残った者と、
未来をつくる。
詩人であるノビーには、
まだ見たことのない景色を、
見せたい。
そのためなら、
弟弟子がリングに置いていった
後始末も、
二人で引き受けよう。
リングの掃除も、
試合のうちである。
考えてみれば、
タッグとは、
勝つためだけに組むものではないのかもしれない。
相手が倒れたときには、
ロープ際で手を伸ばす。
自分が倒れたときには、
誰かの手を探す。
そして、
どうにもならない試合でも、
最後までリングに立ち続ける。
そのために、
人はタッグを組むのだろう。
映画も、
会社も、
案外、
同じなのかもしれない。
誰と始めたかより、
最後に誰と、
リングに立っているか。
歳を重ねると、
そちらのほうが、
大切に思えてくる。
だから、
まだ終わりではない。
怪人ノビーと、
ボクはリングにいる。
ゴングは、
まだ鳴り終わっていない。
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MITSUNORI DEMACHI
株式会社ゆかし 代表取締役


