大塚信一監督 Interview
大塚信一(おおつかしんいち)
1980年、長崎県生まれ。フルタイムで働きながら独学で映画制作を学び、長谷川和彦監督に師事。『
連合赤軍』のシナリオ制作にも携わる。
長編デビュー作『横須賀綺譚』(2020)は中国・重慶青年映画祭で上映。長編第2作『POCA PON
ポカポン』は、第38回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門でワールドプレミア上映され
、RogerEbert.comでも日本のインディーズ映画として紹介された。
現在はラーメン店で働きながら、映画を作り続けている。
( Chapter 01 )
映画は、気軽に撮れるものではなかった。
──大塚監督が、最初に「映画を撮ろう」と思った頃のことから聞かせてください。
大塚信一監督(以下、大塚監督):遙か昔すぎて、あまり覚えていないんですが(笑)、ゴジさん(師である長谷川和彦監督)との出会いの中で撮ろうと思いました。
『連合赤軍』という大変な企画が最初の刷り込みとしてあるので、自分の中には「映画というのは、なかなか撮れないものだ」「気軽に撮るものじゃない」という感覚が強くあります。
未完成のシナリオが500ページ、8時間半もあるんですよ。完成稿になったら15時間分くらいになるんじゃないでしょうか。
いまのように配信ドラマがある時代でもないですからね……。途方に暮れていました(笑)。
──子どもの頃に、「映画って面白い」と強く感じた作品はありますか。
大塚監督:マーティン・スコセッシ監督の『ケープ・フィア』(1991年版)です。テレビの金曜ロードショーで何度も繰り返し放映されていました。
テレビドラマとは違って、「何かヤバいものが描かれている」と子ども心に感じていましたね。
最近、久しぶりに見直したんですが、カット割りなんかも随分実験していて、若いスコセッシの野心を感じました。
──映画以外で、いまの大塚監督をつくっているものは何でしょうか。
大塚監督:ラグビーかな……。ポジションごとにプレーの内容が変わるので、足が遅くても、身体が小さくても、一個長所があれば活躍できるスポーツなのが好きでした。
それに、どんなにプレーが上手くても、勇気がなければ仲間から信頼されない。逆にプレーが下手でも、勇気さえあれば仲間から讃えられる。
最近はラグビーもアスリート化して、いわゆる「ラガーマン」がいなくなったのは寂しい限りです。
普段ですか?フツーに働いて、フツーにお父さんをやっています(笑)。
( Chapter 02 )
気づいたら、一本の映画になっていた。
──今回の映画には、「どうしても撮りたい」という強い動機があったのでしょうか。
大塚監督:「どうしても撮りたい」という強い動機が、果たしてあったのか……。ちょっと、よく分からないんです。
あまり先のことを考えず、目の前のことをコツコツ積み上げていたら、一本の映画が出来ていた。自分自身、それに驚いているというのが実感です。
──主人公の中に、大塚監督ご自身と重なる部分はありますか。
大塚監督:これまで、私小説的な映画は撮ってこなかったと思います。
面白い人生を歩ませていただいているとは思いますが、僕自身、自分のことをあまり面白い人間だとは思っていません。凡庸な人間だ、と。
だから、自分自身がそのまま映画になるとは思えないんです。ただ、シナリオを書くときには、自分に引き寄せないと書けない部分もある。
今回は、むりくり(笑)、「大楠駿一=大塚信一」と、自分の方へ引き寄せた。そんな感じですね。
( Chapter 03 )
役者は、シナリオさえ変えてしまう。
──撮影現場で、いまでも忘れられない出来事はありますか。
大塚監督:前作『横須賀綺譚』のときの、しじみさんですね。いまでも、役者と向き合うときの自分の指針になっています。
あるシーンで、しじみさんはシナリオに書いてある台詞もト書きも、一文字も変えずに演じたんです。
ところが、芝居のニュアンスだけで、そのシーンの意味を真逆に変えてしまった。演出どころか、シナリオまで変更させられた。
「役者って、こんなことまでできるんだ」、その驚きが、いまでも役者と向き合うときの指針になっています。
──インディーズで映画をつくることについては、どう考えていますか。
大塚監督:そもそも、自分には「インディーズ映画を撮っている」という自覚がありません。
単に、映画を撮っているだけです。与えられた条件。可能な環境。その中で、ベストな選択をしているだけです。
ただ、今後も映画制作を続けていくためには、充分な予算や環境を整えていくことも必要だと思っています。
映画制作を持続可能なものにするためにも、そこには今後、腐心していきたいですね。
( Chapter 04 )
映画は、「なる」。
──完成した映画を初めて観たとき、ご自身ではどう感じましたか。
大塚監督:最初から最後まで、自分が想定していた映画とは、まったく違う映画になっています。
でも、僕にとって創造とは、そういうことなんです。
丸山眞男(政治学者)は、世界の創世神話を「つくる」「うむ」「なる」という三つの型から考えています。その中で、「つくる」と「なる」が両極にあって、「うむ」はその中間にある。
ユダヤ=キリスト教的な世界観では「つくる」の力が強いのに対して、日本の神話では「なる」の力が強い、と。
僕も映画については、自分が映画を「つくる」というより、映画が「なる」という実感に近いんです。
──最後に、この映画をこれから観る人へ伝えたいことはありますか。
大塚監督:ありません(笑)。僕はむしろ、この映画について皆さんから教えていただく立場だと思っています。
観た人が何を感じたのか。どういう映画に見えたのか。ぜひ感想を聞かせてください。
SNSでも、レビューサイトでも構いません。必ず目を通して、明日への糧にさせてください。


