俳優 小林大斗 Interview
小林 大斗(こばやし ひろと)
2000年、東京都生まれ。合同会社ミッシングピース所属。2020年頃より舞台を中心に俳優活動を重ね、劇団あしからず。の公演などに出演。2022年よりテレビドラマにも活動の場を広げ、Huluオリジナル『十角館の殺人』、日本テレビ『私をもらって ~追憶編~』、MBS『ふったらどしゃぶり』、読売テレビ『子宮恋愛』などに出演している。
比嘉一志監督とは、2024年のSouvenir「流星群」MVでもタッグを組み、映画『劇情』では、映画監督を志す田島健吾役を演じた。2026年には清水崇監督『八つ墓村』『口に関するアンケート』にも出演するなど、舞台・映画・テレビドラマを横断して活動を続けている。
( Chapter 01 )
夢を持つ人は、本当に「強い」のか。
──最初に映画『劇情』の脚本を読んだとき、田島健吾を「いいヤツ」だと思いましたか。
小林大斗(以下、小林):「いいヤツか」と聞かれると、素直に「はい」とは答えづらいですね(笑)。
でも、その面倒さみたいなものは、田島からなくしてはいけないもののような気がしています。だから僕にとっては、近くにいてほしい存在です。
──田島が彩に言う「夢とかなくて、人生楽しい?」という言葉は、悪意はなくても、受け取る側によってはかなり残酷です。この台詞をどう捉えていましたか。また、夢を持っている田島自身を「強い人」だと思っていましたか。
小林:あまり深く考えすぎないようにしていました。
少し距離感を保ちながら台詞を言って、受け取る人の精神状態によって、優しくも残酷にも、どちらに聞こえても面白いなと思っていました。
田島にとって夢を追うことは、自分のエネルギーにつながっているんですよね。そういう意味では、彼は「強い」と思います。
( Chapter 02 )
「一緒にやってみようよ、楽しそうじゃない?」
──田島は、就活に苦しんでいる彩を自主映画の撮影へ誘います。彩を助けたいのか、映画の世界へ引き込みたいのか、それとも単純に人手がほしいのか。田島はどんな気持ちで声をかけたのでしょう。
小林:たぶん、それら全部の要素があったんだと思います。
ただ、どれかひとつを強く意識しているという感じではなくて、「一緒にやってみようよ、楽しそうじゃない?」という好奇心の方が強かったんじゃないでしょうか。
断られたら、それはそれでしょうがない。でも、とりあえず誘うだけ誘ってみよう。田島は、そんなふうに考えていたと思います。
──比嘉一志監督とは、Souvenir「流星群」の MV でも一度ご一緒しています。『劇情』では、監督との関係や演出の受け取り方に変化はありましたか。
小林:以前ご一緒したときから、俳優部にすごく親身になって、同じ目線で接してくださる方だという認識があったので、信頼していました。
基本的に肯定してくださるんですよ。なので、「何かあれば、もっと言ってもらって大丈夫ですよ!」という思いも、ゼロではなかったです(笑)。
( Chapter 03 )
いかに、普通にそこに居られるか。
──映画監督を目指す田島を、本物の映画監督である比嘉監督の前で演じるのは、不思議な感覚ではありませんでしたか。
小林:撮影現場で使われている用語などは、振る舞いとして観察していたと思います。でも、田島というキャラクターについては、かなり好きにやらせていただきました。──田島を「本当に映画を撮れそうな人」に見せるために、意識したことはありましたか。
また、舞台で培ってきた演技を映画では「出しすぎない」ようにした部分はあったのでしょうか。
小林:「映画を撮れそうな人に見せたい」というよりは、映画への思い、熱意、向き合い方を全力でやる。それが結果として「この人は映画を撮れそうだ」という見え方につながればいい、という感じでした。舞台と映画の違いについては、そこまで意識していなかったですね。
ひいて言えば、「いかに普通にそこに居られるか」ということは考えていました。
( Chapter 04 )
夢を持つことと、その人の価値は別のもの。
──『劇情』には「通行人も主役」という言葉が登場します。夢に向かって真っ直ぐ進む田島自身は、自分とは違う生き方をしている人のことを、本当の意味で理解できていると思いますか。
小林:これは、また難しい質問ですね(笑)。田島自身は、そこまで深く理解できていないんじゃない
か、というのが僕の見解です。
でも、映画制作に取り組んだ結果、田島自身も何かしらを得た。それは間違いないと思います。
──もし明日、田島が「映画監督になる」という夢を追えなくなったとしても、田島は自分らしく生き
ていけると思いますか。そして、この作品を演じた今、小林さん自身は「夢を持つこと」と「その人の
価値」を、どんな関係だと考えていますか。
小林:生きていけると思います。もし夢を追えなくなることに、田島なりの相応の理由があったのなら、それもまた糧にして、今日を生きるエネルギーにしていってほしい。
これは、もう僕の願いになってしまいますけど(笑)。「その人の価値」については、他人が判断するものではなく、その人自身が決めることだと僕は思っています。
だから、「夢を持つこと」が自分自身の価値につながると思う人なら、そうしたらいい。そうではない人もいると思います。
この『劇情』という作品が、自分の価値を下げるのではなく、むしろ自分の価値を上げられる何かを見つける、ちょっとしたきっかけになれたら。表現者として、これ以上ない喜びです。


